さちこの部屋(202)

chit chat (64) 〜次男の旅立ち〜


 少し前のことになるが、今年の春、次男Aが大学を卒業し、就職して香川県へ旅立って行った。

 地元の県立高校、そして自宅から近いという理由だけで入学した大学(自転車で20分くらい)、バイトもこれまた自転車で10分くらいの地元の商業施設と、生まれてこの方、二市一町プラスα圏内で生活してきた次男。

 幼い頃から、「Aちゃんは地元の高校、大学、そして地元の役場とかに就職して、ずーっとお母さんの側にいてね♡」とよく冗談半分に言い聞かせてきた。

 本人も最初のうちは「うん!わかったー😆」と素直に返事をしていたものの、思春期の頃には「いやいや、俺は絶対に都内に出るから!」と親離れ発言をするようになった。

 うんうん、よしよし。

 それが正常な反応だとも。

 穏やかで気い使いしいのコミュ力の高い息子だが、向上心とかやる気とか、そういったものとは無縁な子。

 大学進学の際も、就活の際も、特にやりたい事や「夢」などもなかったようで。

 なので、流されるままに行き着いたのが今の会社。

 就職が決まってほっとしたのも束の間、入社してすぐに1年間香川県に出向することになった。

 今までずーっと親元でぬくぬくと生活していたAに、いきなり遠く離れた地方で一人暮らししながら新社会人としての生活なんてできるのだろうか。

 Aは周囲に気を使い過ぎる気質故に豆腐メンタルな子で、ストレスが溜まると持病のアトピーが悪化する。

 幼い頃から、春の新生活が始まる度にメンタルケアやらアトピーのケアやらで大変だった。

 大丈夫なのかしらねーと心配していたが、結局強力な相棒が一緒に旅立ってくれることになった。

 その相棒とは、Aより10歳年上の彼女だ。

 Aの転勤を機に、同棲することにしたらしい。

 彼女は10歳上だが、小柄で華奢で童顔、2人並んでいると同い年くらいのカップルにしか見えない。

 私も一度一緒に食事をしたが、愛想が良くってとっても可愛らしい女性だ。

 彼女はフリーランスで活躍しているプロのデザイナー。

 なのでオンラインでも仕事が成立するため、Aと一緒に香川県へ引っ越しても問題ないわけだ。

 以前、まだAが大学生だった頃に、彼女にこんな質問をしたことがある。

 「うちの息子は大学生で、まだ全然将来の見通しも立っていない状況だけれど、〇〇ちゃん(彼女)の年齢を考えたら、Aが一人前になれるまで待てるの?もしかしてちゃんと自立できない可能性もあるんだよ?」と。

 すると彼女は「大丈夫です!いざとなったら私がAを養います。」と笑顔できっぱりと答えた。

 見た目はあどけなさの残る可愛らしい女性だが、こりゃ頼もしい。

 こんな彼女が同行してくれるのだから、初めての一人暮らしも、新天地での社会人デビューも何とか二人で乗り切っていけるだろう。

 いや乗り切っていけるどころか、まだ社会人デビューしたてのひよっこのくせに、いきなり彼女と同棲かよー。

 ラブラブじゃないか笑

 新天地での不安より、楽しくってしょうがないだろうよ。

 心配して損したわい。

 そんなわけで、Aの引っ越しに関しては一切ノータッチ。

 ママ友や会員さん達から、子どもが独り立ちするから引越し先や引越しの手配、荷造りから新生活のための買い物など、その準備のために大わらわで…とかよく聞いていたが、私はなーんにもやらんかった。

 時々進捗状況を聞いたり、御祝いはしてやったものの、今どきはネットで手配が全て済むようだし、引越し代は会社から出るし、長年一人暮らししてきた彼女がついているんだから親の出る幕はなし。

 何も手伝っていなかったし、Aとは4年前から別居しているので、全然他県に行ってしまう実感がわかないままに出発当日の朝を迎えた。

 当日の朝、前泊していた彼女とAと娘と元夫と最寄り駅で待ち合わせをし、みんなで改札で見送ることに。

 彼女にAのことをくれぐれも宜しくお願いしますと挨拶をし、食事代を入れたポチ袋をAに渡しながら「Aは昔から身体が弱いんだから、しっかり体調管理するんだよ。体調管理も仕事のうちだからね!」と頭をぽんぽんすると、はいはいとめんどくさそうに返事するA。

 そして深々とお辞儀をする彼女の横で「じゃあねー。」とさらっと挨拶を済ませ、改札を抜けてホームへの階段を降りていく二人の後ろ姿を完全に見えなくなるまで見送る私。

 この時になって初めて「あー…Aは本当にこの街を出て行くんだなー。そして私はあの子のお母さんを卒業したんだな…。」としみじみ感じた。

 これまで、子ども達の卒業式ではあまり感じなかった感傷。

 幼い頃はお母さん子で、「大きくなったらお母さんと結婚する!!」と言っていた次男。

 私がとある芸能人のファンだと知ったら、本気でヤキモチを焼いていた小さなあの子が、将来の伴侶(いずれ結婚する予定だそうだ。)を連れて生まれ育った街から旅立って行く。

 もう私があれこれ世話を焼いてやらなくても、一緒に生きていくパートナーがいる。

 何だかすっかり息子の結婚式に参列した母の気持ちになってしまった。

 とはいえ、まだまだ半人前。

 きっとこれからもあれこれツッコミを入れなきゃならんことが出てくるだろうけど。

 余談だが、そんなお見送りシーンを会員Yちゃんが出勤する際にドンピシャ目撃していたらしい。

 後日その事を聞いて、「声かけてくれたらいいのにー。」と言ったら「いや、なんか感動のシーンで声かけられなかった😅」と言われた。

 実際にはちょっとうるうるしたくらいで泣きながら見送った…ってほどではなかったし、時間にしたら5分もかかってなかったんだけど、同じ年頃のお子さんを持つYちゃんだから、察してくれたんでしょうね😊

 ちょうど今日、Aから荷物が届いた。

 初任給で親への感謝のプレゼントってやつだ。

 「初任給が出たから、お母さんにお酒送るよ!」と連絡が来たのはかれこれ1か月以上前のこと。

 遅っ…。

 いや、まあ気持ちはめっちゃ嬉しいんだけど、相変わらずのんびりしてるなー。

 そしてお酒の好みを訊かれたので伝えてあったのだが、「苦手」と伝えた方の種類のお酒が届いた。

 そういうところも相変わらず笑

 さすが肉まん1個だけを箱入りでよこした男…笑笑(ブログ「さちこの部屋」(190)の②2参照)

 うちの子供たちは幼稚園卒園以来、基本、母の日も母の誕生日も無視なので、子ども達が大きくなってから初めて頂戴したプレゼント✨

 有り難過ぎてもったいないから当分飾っておいて、それをニヤニヤ眺めながら安酒呑もーっと。

 Aちゃん、有難う!

 Aの健康と幸せを毎日埼玉から祈ってるよー。


※今回の添付写真は次男が贈ってくれたお酒。

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