さちこの部屋(133)

「母、Y子」〜その4〜


 このシリーズの最初の方でも少し触れたが、母はとにかく運動が嫌い。

 うちの家族は、父は積極的に体操したりウォーキングしたりするし、姉はヨガやウォーキング、5年前からはZUMBAとToningで有酸素運動と筋トレに勤しみ、兄は元競輪選手、私はフィットネスインストラクターと、母以外はみんな身体を動かすことが好きだが、母だけはいくら運動するよう促しても続かなかった。

 ずいぶん前(認知症になる前)のことだが、以前から「このままでは絶対に母はボケる!!」と危惧していた姉と私は、母を説き伏せて体育館に連れて行ったことがある。

 いきなりエアロやステップや筋トレのレッスンではついて行けないだろうと、同世代の方々がたくさん参加されていたバランスボールのレッスンに3人で参加した。

 数回は付き添いで一緒に参加し、そのうち同世代のジム友でもできて楽しく継続してくれるようになれば…、さらにお友達の輪が拡がって他のレッスンにもトライしたり、一緒にランチなんかに行ってくれるようになってくれたら…(母は近所に友達付き合いをしている方がほぼいないので。)とあわよくばそんな期待を抱いていたのだが、結果から言うとその日、母はまともにレッスンを受けられなかった。

 レッスンが始まって間もなく、お腹が痛くてどうしてもトイレに…と母はスタジオを途中提出し、とうとうそのままレッスン終了まで戻って来ることはなかったのだ。

 姿が見当たらないので姉と2人で探すと、女子ロッカーにいるのを姉が発見。

 急にお腹が痛くなって、トイレにこもっていたと話す母。

 えー。

 さっきまで元気そうだったじゃん😑

 まあ、確かに急な腹痛、下痢になることもあるだろうが。

 急な腹痛が果たして仮病だったのかどうかわからないが、仮病だとしたら、いい大人がそんな嘘をついてまで運動するのが嫌なのか。

 若しくは仮病じゃなかったとしたら、急な腹痛を起こしてトイレから出られなくなるほど運動することがストレスなのか。

 そこまで嫌なら仕方ないかーと体育館に連れて行くのは諦めた。

 その後も、出かけるのが嫌なら自宅でできる運動をとあれこれ試してみたが続かない。

 いくら周りがやんや言っても、結局は本人のやる気次第だものね。

 運動が認知症の予防になること、また、運動不足に直結するわけではないが、座る時間が長いと生活習慣病や認知症のリスクが上がることは定説となっている。(座って過ごす時間が長い生活習慣(セデンタリー・ライフスタイル)が生活習慣病や認知機能の低下と関連するという研究がある。セデンタリ―・ライフスタイルは人との交流がない、活動範囲が狭いといったことも含まれるので、運動不足と同義ではないが、深く関連することは間違いない。)

 母はたまーに正気に返ったようになり、「なんで私、こんなんなっちゃったのかしら…。」とつぶやくことがあるらしい。

 姉と私は、「は?だから運動しなかったからだってー!😤」と苦笑しながら話す。

 運動していても、いつかは認知症になったかもしれないが、もしかしたらもっと発症を遅らせることができたかもしれない。

 母にはもっと健康寿命を伸ばして楽しい老後を送ってほしかった。

 だからこそ、家族みんながいろいろと促したりサポートしたりしてきたのに…と思うと、ちょっと意地悪だが「自業自得」という言葉がよぎってしまう。

 だって認知症になる前の母は、私たちが運動するよう口うるさく言う度に「あんた達には迷惑かけないから。」と言っていた。

 どの口が言うてんねーんっ!!

 (特に姉に)迷惑かけまくりやーん!😑

 とツッコミを入れたいところだが、時すでに遅し。

 今の母には何のことやらわからないだろう。

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