さちこの部屋(223)
母Y子、その9〜その1〜
これまでに何度か書いてきた「母Y子」シリーズ。
母Y子は9月26日、家族に見守られながら永眠した。
私自身の気持ちの整理も兼ねて、「母Y子」シリーズの最終回を書こうと思う。
主に介護を担当して寄り添っていたのは専業主婦(その当時)で実家から徒歩1分の距離に住む姉、私はちょうど離婚して実家から少し距離が離れたこと、そして仕事に集中しなければならない時期で、大したお手伝いもしてなかったのだけれど。
まあ、できる事をと思い、介護ストレス(ほとんど動かない父と兄(姉からすると弟)へのストレス含む。)で翻弄されている姉の愚痴の聞き役を。
そして、Moovaの中にも親の介護をする世代がたくさんいらっしゃるので、「あー、みんな同じなんだな…」と共感してもらったり、辛い介護生活の中でも、ちょっとでもクスッと笑って息抜きしてもらえたら…と思い、「母Y子」シリーズを書いてきた。
親の介護は多かれ少なかれ誰しも関わりがある事なので、今まさに介護生活真っ只中の方や既に介護を終えたベテランの先輩方からもたくさんお声がけいただいた。
それだけ身近な問題ということだろう。
母Y子は数年前から認知症になり、坂を転げ落ちるようにどんどん症状が進み、2〜3
年前くらいから近隣の施設にデイサービスやショートステイでお世話になっていた。
そして、ショートステイで転倒して二週間入院、股関節の人工関節手術後にそのまま施設に入所した。
この入院中に、うちの次男と娘を連れて母のお見舞いに行った時のこと。
この時既に私のことも姉のことも誰だかわからなくなっていたが、まだ父のことは認識していたようだ。
久しぶりに会う孫たちに会ったらどんな反応をするかと楽しみにしていたのだが、母はうちの子ども達を見て「…芸能人の方?」と言っていた。
あんなに可愛がってくれたのに、孫のことも忘れてしまうのねー。
散々酷い目に合わされた父のことは覚えてるのに。
この頃、もう言葉がはっきりしなくなってきていて、何を言っているのか聞き取るのは一苦労だったのだが、あまり口を開けずに息が漏れるように「シャーシャシャ…シューシュルシュル…」って感じで話す母を見て、うちの次男が「すごいねーババ、パーセルタング使えるんだねー笑笑」と茶化した。
※パーセルタングとは、J.K.ローリングのファンタジー小説「ハリー・ポッター」シリーズに登場する蛇の言葉(蛇語)を指します。この言葉を理解し話せる者は「パーセルマウス」と呼ばれ、非常に稀な能力とされています。
それを聞いてハリー・ポッター大ファンの私は大爆笑。
何かに似てる似てると思ってたら、蛇語だったかー笑
まさか、うちの母に蛇語使いの才能が隠れていたとは笑笑
何を言われているのかさっぱりわかっていないであろう母も、元々お話し好きだから「シューシュルシュル…シャーシャシャシャシャ…」とお話ししながらにこにこ談笑した良い思い出だ。
思えば、三世代揃って和やかな時間を過ごしたのはこの時が最後であった。
その次に私が母に会ったのは施設に面会に行った時だったが、車椅子に乗せられた母は、もうほとんど何を言っているのか聞き取りできない状態だった。
やはり車椅子生活になると、いろんな機能が低下していくのが明らかだ。
談話室のようなところで、姉と姉の娘、私の3人で母と面会したのだが、お互いに何か話していても全く意思疎通ができない。
そこの部屋は仕切りや壁のない、通路と一続きのオープンスペースで、あまり暖房が効かずちょっと肌寒かったのだが、何を言ってるんだか全くわからない母がはっきりと「寒くてだみだ〜…」(誤字ではない。母は山形出身なので、「だめだ〜」が訛ると「だみだ〜」となる。)と言った。
それを機に、「そっかー寒いよね。じゃあもうお部屋に戻ろう。」と職員さんに母を引き渡して帰宅したのだが、思えば最後に聞いた、ちゃんと意味のある、聞き取れた母の言葉が「寒くてだみだ〜…」になってしまった笑
なんかもっと違う言葉が聞きたかったよ、ババ🥲
まあ、最後にはっきり聞けたのはそれだったけれど、育ててもらっている間に、大切なことをたくさん教えてくれたからいいか。
私と母はあまり気が合わなくて、もし母と私が同級生だったら、嫌いじゃないけど友達にはならないだろうなーって相性だった。
いや、特に仲が悪かったわけではないが。
姉と母ほどの親子の密着度合いではなかったというだけ。
大人になって、子どもを産んで育てて初めて親の有難みがわかる、というのは本当。
昔の人は良いこと言うなー。
そして、親の教えは大抵間違っていない。
生きていく上で大切なこと、人付き合いのことやら、生活習慣に至るまで、たくさんたくさん教えてくれた母。
姉と違って、自由奔放でいつも心配ばかりかけていた娘だが、やはりあなたの娘に産まれて良かったと思っている。
長くなるので次回に続く 。
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