ＢＴＳ（０８９）

（ＢＴＳ８８からの続き）

チフレ：ＡＩが進化すると、日常生活はどんな感じになるの？

セフレ：そうだなぁ。毎日乗っている車で例えてみると、こんな感じなんだろうね。

【ＡＩカーと運転手】

運転手が車に近づくと…

「ガチャ」車のドア（運転席側もスライド式）が自動で開く。

ＡＩカー「おはようございます。今日はいつもよりちょっと遅めですね。」

運転手「昨夜、遅くまでテレビ見てたからね。」

ＡＩカー「夜更かしは健康に良くないですよ。次回からは録画して、通勤車内で見られるように準備しますので、録画予約をお申し付けください。」

運転手「ありがとう。でも、昨夜は野球の世界大会の決勝に日本が進んだので、どうしてもリアルタイムで見たかったんだよ。」

ＡＩカー「であれば、言っていただければ、職場には２時間ほど遅れて出勤する旨、上手く差し障りのない内容でメールしておきましたのに。」

運転手「でも、今日は遅出出社はできないんだよ。」

ＡＩカー「１０時からの会議の件ですか？」

運転手「そう。」

ＡＩカー「昨夜のうちに、資料の誤字・脱字と、挿絵・写真のカラートーンの修正が終了したと、デスクＡＩからメールが届いています。通勤車内で確認ができますから、いつもよりゆっくりの出勤で大丈夫です。」

運転手「ありがとう。じゃ、向かってくれ。」

「ウィーン、ガシュッ」（シートベルト装着音）。「ガチャ」（ドアロック音）。「グル。ブーン」（発進音）

ＡＩカー「この出発時間だと、いつもの交通状況から判断して、通常より５分遅くの到着になります。有料道を使用しますか？その場合は、いつもより１０分早く到着できますが、別途５５０円高速代がかかり、高速走行する分、燃費が１２％悪くなり、燃料費１２０円の無駄使いになります。」

運転手「一般道で行ってくれ。」

ＡＩカー「了解です。そういえば、最近、運動不足ですよね。今月はジムに駐車する回数がいつもより少ないですし、体重も増えています。」（運転シートに座った際、体重、血圧、脈拍、呼吸、水分量などのバイタル・データが自動的に記録される。）

運転手「そうだね。でも、昨夜の日本選手には感動したので、俺も仕事に運動に頑張るぞ。」

ＡＩカー「昨夜の決勝戦での逆転場面と決勝打の場面を、再生しましょうか。」

運転手「よろしく。それと、昨夜の決勝戦について、各局の放送を一気見したいのだけど、準備できる？」

ＡＩカー「日本テレビの朝番組が、あと１０分で終わるので、１１分後には一気見ができます。」

運転手「お願いします。」

ＡＩカー「たった今、鶴瀬駅前交差点で人身事故発生です。今からだと渋滞に巻き込まれることが予想されるので、ここから別ルートに切り替えます。経路は一旦、国道に出てから西に向かい、朝霞交差点で元のルートに戻る経路です。ＯＫですか？」

運転手「ＯＫ。この時間は小学生の通学時間帯なので、あえて住宅街を抜ける経路を外したんだね。」

ＡＩカー「日中や夜間であれば、住宅街を抜ける経路の方が早いのですがね。それから、今回選択した経路では、天気予報では今朝はスッキリ晴れた朝だとアナウンサーが言ってたので、富士見陸橋では南東方向に富士山が見えると思います。」

運転手「おっ、いいね。昨夜は野球で日本一を見れ、今朝は日本一の富士山を見て出勤だね。」

ＡＩカー「そうですね。ちなみに、富士山までドライブしたのは、３年前の８月１１日の山の日記念日でした。あの時から運転も上手になりましたよね。今から１０時からの会議資料ＡＩ修正版を映します。再度修正が必要な部分は口頭で指示してください。」

運転手「そうだったな。よく覚えてるな凄い。」「あと会議資料を画面に映してくれ。」

ＡＩカー「会議資料了解です。」「ＡＩですから。バカにしないでください。ちなみに、今週末は仕事もなく用事もなくお休みですよね。」

運転手「俺のスケジュールはスマホに書いてあるから、それで知ってるんだろ。」

ＡＩカー「はい。当然です。それからメールで女性Ａさんと遊びに行く約束をしていたのも知っています。」

運転手「そういうことなんだよ。全て知っているならＡさんと、どこに遊びに行くのがいいと思う？」

ＡＩカー「Ａさんと、というよりは、本当はＢさんと遊びに行きたいのですよね。私もＡさんは車の車内での態度とかあなたへの言葉使いとか、あまり好ましいものではないと判断していますが。」「今、右手に富士山が見えます。」

運転手「それは分かるけど、まぁそう言うなよ。一応Ａさんも良いところはあるし。Ｂさんが今週末は都合が悪いから仕方が無いだろう。」「おっ、富士山、日本一！いつもありがとう。」

ＡＩカー「でも、やっぱりＢさん推しですよね。ＡＩとしてもそう判断します。」「今、昨夜の決勝戦の各局放送一気見編集が終了しました。再生開始しますか？」

運転手「再生頼む。」「まぁ、いいじゃないか。それぞれ大人の事情もあるわけだし。Ａさんとの食事はどこがいいと思う？」

ＡＩカー「Ａさんの好みは肉とビールなので、神田のビストロ６３５がお勧めですが、本当はあなたは、浅草の麦とろ御膳と日本酒のお店に行きたいのですよね。」

運転手「よく分かってるなー。」

ＡＩカー「サイトの閲覧回数と、閲覧時間が違いますから。」

運転手「やっぱり、Ｂさんと和食と日本酒で楽しくゆっくりしっぽり過ごしたいよな。」

ＡＩカー「フレンチとワインならＣさんと一緒に行く、という選択肢もありますが、何故、今回は連絡していないのですか？」

運転手「あれ、知らないのだっけ。」

ＡＩカー「最近、電話やＬＩＮＥの回数が極端に少ない事は把握できていますが、デジタル環境外での出来事、例えば部屋の中や手紙でのやりとり、電波の届かない地下などでの出来事は把握できませんので。」

運転手「ＡＩにも死角があるんだなぁ。」

ＡＩカー「あと、文体や絵文字などから、送信者の感情を類推することはできますが、人間の複雑な感情、特に恋愛感情を完全に理解するにはまだまだ努力が足りません。ところでＣさんとは？」「もうすぐ目的地です。」

運転手「前回、一緒に遊びに行ったときに、いろいろと膝を突き合わせてお話をして、しばらく距離を置くことにしたんだよ。理由はいろいろあってね。」

ＡＩカー「そうでしたか。私の知らないところで、そういうことがあったのですね。総合的に判断して、やはりあなたには、Ｂさんが一番よく、次にＣさん、Ａさんはお勧めできません。」

ブーン、ガシャ。（エンジンが止まりドアが開く）

ＡＩカー「目的地に到着しました。気を付けていってらっしゃい。会議の成功を祈ります。」

【ＡＩカーと運転手、終了】

セフレ：と、こんな感じかな。

カブレ：これからはＡＩに、勝手に自分の好みを決められることがないように注意するぞ。自分の好みは自分で決める自分でいたい、いつまでも。だな。

テブレ：それがいいよな。いつまでも自分らしく生きていこう。

チフレ：よしＡＩに負けないように生きるぞ！

サブレ：チフレ、ＡＩに負けないってことじゃなく、そうじゃなくて、ＡＩをうまく利用すればいいだけでしょ。

フレア：多分、それ一番難しいのだと思う。もうＡＩなしでは生きていけない心と体になってしまっているのよ、私たちは。スマホを手にした時から…

セフレ：フレア、それ何だか怖い。