さちこの部屋(226)

母Y子、その9〜その4〜


 家族に見守られながら、安らかに永遠の眠りについた母。

 長年連れ添った妻が亡くなった直後、父がすこしだけ、泣いた。

 思えば父が泣いているのを見たのは初めてだ。

 うちの父はクールで現実主義、情が深くて優しい母とは真逆のタイプ。

 長くなるので割愛するが、「The 昭和の亭主関白!」な父。

 母はそんな父によく泣かされていた。

 でも母が亡くなった時に顔をくしゃくしゃっとさせて泣いた父を見て、父も人の子、伴侶が亡くなった時に涙が出る人で良かった…と安堵した。

 私は父を見ながら「ババ、良かったねぇ…ジジ、ババが死んで泣いてくれたよ。」と心の中で呟いた。

 長年、母が一生懸命に亭主関白の父に仕えていたというイメージだったが、やはり子供からするとわからない、夫婦の絆みたいなものがあったのだろう。


 さて、母が亡くなった後は、葬儀屋さんを決定して手配する等やる事がたくさんあって、いつまでも哀しみに浸ってはいられない。

 私はその日、夕方にMoovaオリジナルトートバッグが業者から届くことになっており、夜にはスタッフがやって来て、一緒に検品・梱包作業をする約束になっていた。

 葬儀屋さんの手配に全員がん首揃えてても仕方ないので、手配は姉と父に任せ、私はお先に帰宅させてもらった。

 帰る前に姉から「葬儀は何曜日がいい?」と希望を訊かれたので、「そんなのもちろん、Moovaのレッスンが無い日だよ!」と即答。

 まあ、絶対そうしてくれとは言わないが、出来れば、の話し。

 そしたらたまたま葬儀屋さんが混んでいて、最短で空いているのは1週間後ということで、葬儀は翌週の金曜日に決まった。

 もしレッスンがある日に母が危篤になっていたら、最後のお別れに間に合わなかったかもしれない。

 でも母が亡くなったのは金曜日、週に一度の私の休日だったので、危篤の知らせを受けてすぐに駆けつけることができた。

 そして葬儀もまた金曜日。

 レッスンを休まずに葬儀に参列できた。

 私が常に「仕事は休まない」と言っていたから、母からの最後の粋な計らいか。

 グッジョブ!ババ!!

 気を散らすこと無く、ババとのお別れに集中できたよ。

 有難う!

 ちなみにだけど、先日納骨を済ませたのだが、これまた家族全員揃うのが金曜日ということで、金曜日にみんなで納骨を済ませることができたのだった。


 そういえば、うちの娘のファインプレーを。

 母が亡くなってすぐに、職員さんからエンゼルケアの説明があった。

 普通は職員さんが死化粧をしてくださるのだが、そーだ!と思いついて、うちの娘に化粧させてもかまいませんか?と訊ねると二つ返事でオッケーが。

 ずいぶん前にブログに書いたが、うちの娘は顔にコンプレックスがかなりあり(別に特別美人でもないがぶっちゃいくでもなく普通ーの顔だと思うが)、日々メイクの研究を重ねた結果、別人か!?ってくらい上手にメイクができるようになっている。

 娘に振ると、娘もやる気満々だ。

 私はトートバッグの受取りのために先に帰宅したが、娘は自分のメイク道具一式を自宅から持って施設に戻った。

 母は昔から額に1円玉サイズの大きなシミがあり、とても気にしていたので、それをコンシーラーで消してあげてと娘に頼んだら、シミを目立たなくするどころか、陶器のように抜けるように白く(亡くなってるからとお思いでしょうが、そんなレベルではなく、きめ細やかな綺麗な白!)、透き通るような輝く肌に(実際、よく見たらほんの少ーしラメも付いててキラキラしていた。死化粧でキラキラしてても良いんだっけ?…ま、綺麗だからいっかー)。

 元々肌のきめは整っていた母だっったが、やはり亡くなった時はシミ、そして水分が摂れていなかったので乾燥、そして肌の色が少しまだらになっていたのだ。

 それがまあ何と大物女優のように美しい。

 我が娘ながらほんとに器用だわー。

 私も死化粧は娘にやってもらおう。

 そして、ババに最後に親孝行できたよ。

 娘よ、本当に有難う!


 母は今、三芳町総合体育館からすぐ近くの霊園で眠っている。

 私は体育館に行く度に、母のお墓がある方向に一瞬目を向け「ババ、おはよー」「ババ、また明日ね」と挨拶するようになった。

 姉もウォーキングがてらお墓参りできる距離。

 これなら母も寂しくないだろう。


 母が亡くなったことを知った会員の皆さんからいろいろとお気遣いいただいた。

 皆さん、本当に有難うございました。

 「大丈夫?葬儀やら何やら全部終わった後にどっと悲しくなることもあるよ。」とご心配いただいたが、私は大丈夫です。

 このシリーズで以前書いたが、私たち家族のことを忘れてしまった時点で、もう私の母は死んだのだと受け入れていたから。

 もちろん、もう二度と母に会えないという意味では哀しかったけれど、心の準備ができていたので。

 父も同じことを言っていた。

 母と一番仲が良かった姉は、葬儀の後哀しみのあまり不眠と食欲不振で激痩せしてしまったが。

 そんな姉も時薬でだいぶ元気になり、普段通りの日常に戻ったようだ。

 母Y子シリーズはこれで完結とする。

 4週に渡って重たいテーマですみません。

 どんなに哀しい事でも、やはり段々と記憶が曖昧になってゆくので、忘れないように書き残しておきたかった。

 また書くことで、気持ちの整理もつけたくて。

 長々お付き合いくださり、有難うございました!

 来週からは普段通り、もっと軽ーい感じで書きますよー😆


 ババ、懐かしい人達と一緒に、どうか安らかに眠ってね。

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