さちこの部屋(131)
「母、Y子」〜その2〜
母が認知症だとはっきりと診断名がついた頃から、簡単な計算ができなくなってきたり、記憶が混乱してわけのわからないことを言い出したりと、徐々に症状が進行していった。
家事はもちろんだが、着替えもまともにできなくなった。
朝、デイサービスのバスに乗せるために、姉が実家に行き母の身支度を手伝うのだが、毎回素っ頓狂なコーディネートで姉をあたふたさせている。
昨年の猛暑の中でも、薄手のニットを何枚も重ね着していたり(そしてダラダラ大汗をかいている。)、ズボンを脱がせるとパンツを履いていなかったり。
またある時は、ブラジャーを前と後ろ(背中側にブラカップが向いている。)に2つ着けていたり、上下に(1つは胸に、もう1つはお腹のあたりに。)着けていたり。
その驚きの身支度っぷりを見る度に、自分の母親がこんなことも出来なくなったのかとショックを受ける姉。
あとで姉が私にその話をした際、私はブラジャーの乱着(みだれきる)様を聞いて大笑いした。
姉は「実際に見てないから笑えるのよ😤」と憤慨していたが、私はブラジャーを複数枚着けてはいけない決まりがあるわけでなし、誰に迷惑をかけるわけでもないのだし…と姉をなだめた。
びっちりと24時間介護をしているわけではないとはいえ、専業主婦の姉が一番母と関わる時間が多い。
毎日のことだから、笑いに変えられることはどんどん笑い飛ばしていかないと、姉のストレスが溜まるばかりになってしまうだろう。
私も後日、母の着替えを手伝った時にニットを脱がせたところ、肌着の首を通すところに左腕も一緒に通してしまっているのを見つけた。(ちなみにブラジャー複数枚着用も後日見た。)
居合わせた父は呆れ顔をしていたが、私は母に「あら、肩まで出しちゃってセクシー✨…斬新!(笑)でもこれじゃあ首元がきつくて苦しいでしょうよ。」と笑いながら肌着を着直させた。
まだまだ、この先長〜く続く介護。
母の方も笑顔で身支度させてもらう方がいいだろうし、介護する側も同じ面倒を見るなら、笑えるところは笑っちゃった方が精神衛生上よいのではないかと思うのだ。
まあ、ニットや上着の上にブラジャーを着けていたら他所様にご迷惑だろうが、おっぱいが上下4つあろうが、背中側にもあろうが良いではないか。
姉も、私が母と二人きりの時にあったエピソードを話すとやはり大笑いしている。
自分が直接関わっていない時は、気持ちに余裕ができて笑えるのだろう。
「笑い」といっても蔑んだり馬鹿にして笑っているわけではない。
家族内での、思わずぷっと笑ってしまうような感じ。
でも、きっとこの先もっと症状が進行したら、とてもじゃないけど笑えない…みたいなことがたくさん起きてくるだろう。
だからこそ、少しでも長く笑顔で母と関われるようにしておきたい。
少し前まで父親の介護をしていて、最後を看取られた女性にこのブラジャーの件をお話ししたところ、「そうやって笑い飛ばせるのいい!そうじゃなくっちゃ、やってられないよね。」と一緒に笑ってくださった。
人によって介護についての考え方はそれぞれ異なるだろうが、我が家の場合は姉と協力して、うちの家族らしくやっていくしかない。
うちの家族の場合は「笑い」…大事!
来週に続く。
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